ひた走る
そさくさと自分に逃げこみまする
絡まった紐をほどきながら
さとかれないように
自分を巻き込めようとする
髪を手でほぐしながら
谷への道は続く
巻き込みを巻き込みながら
等間隔に続く街灯は心を安定に保たせながら何不自由なく進んでゆく。
忘れたものを忘れた者たち。
最初の、生まれたての、初期衝動のようなあの感覚を忘れてしまった彼らが向かうは無煌な枯古なあの街へ。
希望に縋ることもせず、安堵を求めることもせず、昆虫のような生物の本能のまま、一抹の怪しげな光へと集まってゆく。
何も求めることもせず、類似的な所謂摩耶かしのような一種のムーブメントに身を寄せ、私こそ無機物的な存在なのだと自偉を唱えるのである。
私が過ごすこの街では毎日こんな生産的なものが産まれるばかりである。非生産的であった何か。かつて憧れであった何か。私の青春であった何か。