文則日記

ついに中村文則のデビュー作 銃 を読み終わった。

これで中村文則第1期と呼ばれる、銃 遮光 土の中の子供を制覇したのだ。 この三作品は特に鬱々しくてとても僕好み。

 

気付いたら射精をする主人公が村上春樹なら、気付いたらヤニをしばいてるのが中村文則。今回は特に酷かった、火を付けて一吸いしたら捨て直ぐに次を吸う。親父が膵臓癌で死んだのならば彼は肺がんで死ぬのでしょう。

 

ここで感想をズバッと綺麗にまとめられないから面白かった表現だけ書き留めておく。

 

始めのうちは主人公の心情が全く読み取れない訳だが(というか主人公は空っぽで何を考えているか分からない)、銃が身体の一部となった瞬間から綺麗に読み取れるようになる。

セフレの女と寝た後は、銃を綺麗に磨いたり高い袋に入れて大切に保存する。

その一方、本命の女とのセックスを逃した後は銃を発砲する。

そう、射精出来なかった代わりに銃を発砲するのだ。

 

これだけ見ると「なんやこれ」と可笑しな小説に見えるが、それがそうじゃない。

 

銃が身体の一部となってから心情が読み取れるようになったと言ったが、彼は心に変化が起きた時に銃を使うことによって感情を放出しているのだ。

銃という弾を発射する装置を持ってから、感情を上手く表現出来るようになったのだ。

だが、刑事に問い詰められた時に拳銃に感情を委ねたみたいに、物語が進むにつれて銃に自分が支配されていくのがまた面白い。

銃を身体の一部、というよりもはや自分をコントロールする象徴となるから終盤に銃から距離を置いた主人公が空っぽになったのも頷ける。

射精出来ない代わりに撃つのなら、銃は男性器の代わり!?なんて思った時もあるけど一理ある、けどない。

 

あとは、虐待されてる子供に手足を千切られたザリガニを渡される描写は、実の両親に捨てられたのを表してるのかなと。だから標的を母親の女にしようとしたのかも。 でもあんな彼が仲間意識なんか感じる訳ない。

 

あ、ネタバレ注意で